セットバックとは、土地の境界線から一定の間隔を確保し、建物を建てることを意味します。
前面道路の幅員を広げ、接道義務を果たすために行われることが一般的です。
またこのような物件は、売却に苦戦する可能性が高いです。
今回は、セットバックが必要な物件を売却しにくい理由について解説します。
セットバックが必要な物件が売却しにくい理由4選
以下のような理由により、セットバックが必要な物件は売却しにくいです。
・建て替え後の家が小さくなる
・防災性や利便性が低い
・住宅ローンが組みにくい
・売却時に苦労しやすい
各項目について詳しく説明します。
建て替え後の家が小さくなる
セットバックが必要な物件は、建て替え後の家が小さくなるため、買主には敬遠されやすいです。
こちらは、セットバックした部分が建蔽率や容積率の計算に含まれないことが理由です。
建物の建築面積を考えるときは、敷地面積をもとに建蔽率、容積率を計算し、家の大きさを決定します。
しかし、セットバックした部分はこれらの計算に含まれないため、建て替えの際は現在より小さな家になる可能性があります。
そのためどれだけ他に魅力がある物件でも、将来的に建て替えを検討している買主に対し、セットバックが必要な物件を売却するのは難しいです。
防災性や利便性が低い
セットバックが必要な物件は、防災性や利便性があまり高くありません。
こちらも買主に敬遠されやすい理由の一つです。
防災性が低いのは、前面道路が狭いからです。
そもそもセットバックが必要な理由である接道義務は、災害時に救急車両が通行しやすいように定められたルールです。
要セットバックの物件が面しているのは、幅員が狭い2項道路であるため、災害時に救急車両が通りにくく、防災性は低いと言えます。
また道路の幅が狭いことから、一般の車両も通行しにくくなります。
車での通行が難しいと、買い物など生活に必要な外出にも支障が出る場合があり、利便性が下がるおそれがあります。
住宅ローンが組みにくい
不動産を購入する方のほとんどは住宅ローンを利用しますが、セットバックが必要な物件は住宅ローンが組みにくく、敬遠されやすい傾向にあります。
また住宅ローンが組みにくい理由としては、セットバックが必要な物件の担保価値が低いと判断されやすいことが挙げられます。
住宅ローンを取り扱う金融機関は、融資の可否について物件の担保価値によって判断します。
しかし、用途に制約のある要セットバックの物件は、担保価値が不十分と見なされることもあります。
住宅ローンが利用できなければ、買主は一括購入やより金利の高い住宅ローンを利用しなければいけません。
そのため買主が限定され、売却が難しくなります。
売却時に苦労しやすい
買主がその物件を売却するとき、苦労しやすいことも、セットバックが必要な物件がなかなか売れない理由の一つです。
セットバックが必要な物件は、敷地を後退させなければ建て替えができず、敷地面積が減ることで建物のサイズも小規模になります。
そのため、売主が売却に苦戦するのと同様に、その物件を購入した買主も、老後の住み替え時などには売却に苦労する可能性が高いです。
また要セットバックの物件は、取り扱いや売却が難しいことから、物件の所有者が亡くなった後、家族が相続を希望しないことも考えられます。
つまり買主だけでなく、その子どもにとっても不便な物件になる可能性があるということです。
まとめ
セットバックが必要な物件は、建て替え時の自由度が低く、なおかつお世辞にも便利な物件とは言えないため、売却するのが難しいです。
そのため売却時には建物を解体し、セットバックした状態にしたり、売却価格からセットバック費用分を減額したりといった工夫が必要です。
また一般の買主に対しての売却が難しいのであれば、不動産会社に買い取ってもらうのも一つの手です。