不動産売却という扱う金額の大きい取引をするにあたって、売主が注意すべき点は数多くあります。
またそのうちの一つに、二重譲渡というものが挙げられます。
今回は二重譲渡の概要について、発生した場合の所有権の帰属や売主が負う法的責任について、詳しく解説します。
二重譲渡の概要
不動産の二重譲渡とは、売主が同一の不動産を複数の買主(第一買主、第二買主など)に重ねて売却する行為を指します。
直感的には先に契約した方が有効と思われがちですが、民法上、それぞれの売買契約は原則としていずれも有効に成立します。
売主が、複数の相手と契約を結ぶこと自体は禁止されていないからです。
しかし物理的に一つの不動産を二人以上に引き渡すことはできないため、最終的にはどちらか一方しか所有権を得られず、もう一方の契約は履行不能となります。
近年は不動産登記制度や宅地建物取引業法の規制があるため、故意に行われることは稀ですが、売主の資金繰り悪化や詐欺、権利関係の錯綜などにより発生することがあります。
所有権の帰属と登記の重要性
二重譲渡が発生した場合、不動産の所有権を最終的に獲得できるのは“先に契約した人物”ではなく、“先に不動産登記を備えた人物”です。
民法第177条において、不動産に関する物権の変動は登記をしなければ第三者に対抗できないと定められています。
そのため、例え第二買主が後から契約したとしても、第一買主より先に登記を完了させれば、法的に正当な所有者として認められます。
ただし、第二買主が“第一買主に損害を与える目的”などで売主と通謀していた場合は、例外的に登記があっても所有権を主張できないケースがあります。
このように、不動産取引において登記は、自身の権利を守るための最重要の対抗要件になります。
買主の救済策と売主が負う法的責任
登記を先に済まされた結果、不動産の所有権を得られなかった側の買主は、売主に対して法的手段による救済を求めることになります。 売主は買主に対して物件を引き渡す義務を果たせなくなるため、履行不能による契約解除や、支払った手付金・代金の返還請求、および被った損害の賠償請求が可能です。
また売主の行為は故意に相手を欺く行為であるため、民法上の不法行為責任を問えるほか、刑法上の詐欺罪や背任罪に問われる可能性が極めて高いです。
二重譲渡は、被害を受けた買主にとって重大な不利益となるため、契約後速やかに所有権移転の仮登記や本登記を行うことが最大の防衛策です。
まとめ
本記事でも触れた通り、売主による二重譲渡は、故意であろうと無自覚であろうと発生するケースは多くありません。 しかし、不動産売却はほとんどの方が初めて行うものであり、重複して売買契約を交わすという失敗が起こらないとは言い切れません。 そのため、仲介を依頼する不動産会社を中心に、プロフェッショナルの力を借りながら慎重に売却活動を進めていきましょう。
